奈良県高市郡明日香村にある飛鳥坐神社は、私の大好きな神社のひとつである。
毎年2月の「おんだ祭」は夫婦和合の奇祭として有名である。
この神社は、こじんまりとしていて、境内は広くはないが、ところどころに、男女の性器を象徴した石があり、夫婦和合や子授けの神をおまつりしている。
この神社におまつりされているのは、「むすひ」(結び)の神さまである。「むすひ」とは、男女の性的な交わりだけを表すのではなく、家族や友人などとの人間関係、学校や会社や地域などの社会との関係、物質的なものや精神的なものも含めた生産をも表す。
そういえば、「おにぎり」のことを、「おむすび」ともいう。「おむすび」は、日本人の主食であるコメで作られており、日本人の精神の原点を表している、いわば、スピリチュアル・フードである。「おむすび」は、人の手によって、祈りや願いや感謝の気持ちをこめて握られたもの。「おむすび」は、「むすひ」の神さまが宿る食べ物なのかもしれない。
ところで、この神社には、「福の種」という、かわいらしいお守りがある。私は子授けの種という意味なのかと思い、神社の方にたずねたところ、「いろんな幸せの種ですよ」というお返事をいただいた。夫婦和合、子授けだけでなく、ありとあらゆる「むすひ」がもたらす幸せの種だということなのだろう。
日常生活の中で、ふだんあまり気づくことができない小さな小さな幸せの種。ささいなことでも幸せだと気づく感性が、「福の種」なのだろう。その種を大切に育てていくことが、良い「むすひ」につながるにちがいない。
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