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あをによし 奈良の都の 薬草曼荼羅

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五感で季節を感じる

昨日は夏のように暑いと思ったら、今日は体の底から冷えるような雨が降った。このところの天候不順で、自分自身の体調も崩しそうである。暑くなったり寒くなったりして変わりやすいのが4月の気候であるが、このところの寒暖の差の激しさは、異常気象(温暖化もしくは寒冷化?)を物語っているようである。

そうはいっても、季節が訪れれば、花は咲くし、木々の葉は生い茂る。暑い寒いと言っているが、そうこうしているうちに、早くも、新緑がまぶしい季節の訪れを感じられている。

日本には四季があり、さらに二十四節気がある。また、季節にちなんだ年中行事や地域の行事もある。日本人は、季節感を大切にする民族である。春夏秋冬だけでなく、季節のはざまの移ろいにもいつくしみを感じている。春は、満開の桜を愛で、散りゆく桜の花びらを惜しみ、夏は暑い日の木陰のさわやかな風や川の冷たい水に感謝し、秋は紅葉のさまざまな色合いや美しさを愛で、冬は澄みきった美しい夜空の星に想いを馳せる。なおかつ、春はたけのこ、秋はきのこ、などと食事も季節感を求められている。俳句には季語が欠かせないが、季節を大切にするからこそ生まれたものである。季節をこんなに豊かに感じて楽しめる感性こそ、日本人の独自の民族性であり、DNAなのではないかと感じている。

時代とともに、いったん衰退していた季節の伝統的な行事も、最近は若い世代にも見直されてきている。本屋に行くと、季節の行事に関する書籍も多くみられるようになった。私が愛読しているのは、高橋紀子著「和の行事えほん」(全2巻、2006年、あすなろ書房)である。行事についてわかりやすく説明されていて、なおかつ挿し絵が可愛らしく、子供も大人も楽しめる。

日本の季節の年中行事は、季節の植物を用いたものが多い。お正月にはマツ、節分にはマメ、ひな祭りにはモモ、端午の節句にはショウブ、七夕にはササ、重陽の節句にはキク、冬至にはユズやカボチャなどある。
そして、季節の植物を用いた行事には、健康や長寿を祈願するものが多い。植物の力を通して、神や仏に祈りをささげていたのだ。

季節の行事は、五感で感じられるものが多い。目で見て、耳で聞いて、手で触れて、鼻で匂いを嗅いで、舌で味わって・・・五感を活性化させることによって、植物の力を自分のからだやこころに取り入れることができるのだ。季節の植物には、その時にしかない特別な力がある。現在は、新暦で行事が行われているため、植物をわざわざ温室で育てているが、旧暦で行えば、その季節だけの、旬の植物の力にめぐりあうことができる。

日本人にとって、五感を十分に活用して、季節感を愛でることは、日本人として誇るべき民族性だと感じている。また、このような季節感を通して五感を研ぎ澄ませること、五感で感じられたことを通して自分自身の内面に向き合うことは、こころのケアのひとつともいえる。

季節の行事や植物を大切にしたり、五感を研ぎ澄ませたりすることは、こどもの頃からの情緒教育が大切になってくる。両親が、こどもが幼少の頃から道端の花の名前を教えたり、いろんな行事を体験させたりしていれば、自然や文化や季節感を大切にするように成長するだろう。

だが、大人になってからでも、季節感を愛でることや五感で感じることを大切にするのは、遅くはない。感性を磨き、感受性を豊かにすることは、いつから始めても、決して遅すぎるということはない。こどもからお年寄りまで、こころを育むことは続いているのだ。

こころは、人によってひとりひとり感じ方が違うから、日本人だからといって、すべての人において季節の植物や行事が有効であるとは限らない。しかし、大勢の日本人が春は桜を愛で、秋は紅葉を堪能するわけであるから、やはり、人は植物を自ずから求めているのだろう。自然や植物を自らが欲しているときは、やはり、その場に身をゆだねて、植物や自然に触れ、五感を活性化させ、こころを解き放つことが大切である。ストレスをかかえやすいこの時期、植物や自然を、五感をフルに活用させて「感じる」ことが、ストレス発散やこころのケアにつながる。

tone
by tonepedra | 2010-04-22 23:45 | 五感