あをによし 奈良の都の 薬草曼荼羅

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桜の花にこめられた祈りと癒し

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桜といえば、ソメイヨシノが代表的な日本の桜であるが、オオシマザクラ(大島桜)は、私が最も好きな桜の花である。淡い桜色のソメイヨシノも美しいが、オオシマザクラのような白い花もとても美しい。

オオシマザクラの葉は、道明寺(桜餅)に使われている。オオシマザクラの葉を塩漬けにすると、独特の香り(いわゆる、桜餅のような香り)がするが、それはクマリンという成分が発せられる。ちなみに、塩漬けにしないと、クマリンは出てこない。

サクラは、生薬としては、桜皮(サクラの樹皮)が用いられ、鎮咳、去痰 解毒、解熱などの作用がある。
食用としては、ヤエザクラ(八重桜)の花を桜湯(おめでたい席でよく飲まれる、桜の花のお茶)として、オオシマザクラの葉を桜餅を包む葉として用いられるが、花も葉も、どちらも塩漬けにする。
最近では、サクラの花や葉にも、抗酸化作用、抗糖化作用、美肌作用などがあると研究されているらしい。また、民間療法では、桜湯や桜酒を飲むと、精神安定や安眠、喉の痛み、二日酔いなどにもよいとされている。

ところで、桜で私が思い浮かぶものは、奈良県の吉野の桜と、三輪の大神神社(三輪明神)の鎮花祭(はなしずめのまつり)である。

吉野山は、言わずと知れた桜の名所である。吉野の桜の由来は、修験道の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)が、修行をしているときに蔵王権現様が現れて、感得し、ヤマザクラの木で蔵王権現様の姿を刻み、お祀りしたことに始まると言われている。だから、吉野の桜は、お花見のためにではなく、蔵王権現様への信仰心のために植えられたのだ。つまり、吉野では、桜が神木なのである。

もうひとつ、大神神社(三輪明神)には、「鎮花祭(ちんかさい、はなしずめのまつり)」がある。昔、桜の花びらが風に舞い散る頃、同時に病気も花びらに乗って、風とともに広がり、病気が流行ると言われてきた。そのため、花を鎮めようとしたのである。このお祭りでは、大神神社のご神体である三輪山に自生するスイカズラ(忍冬、金銀花)とササユリ(笹百合)がお供えされる。どちらも、薬草として使われている。スイカズラは、抗菌、解熱、鎮痛などの作用があるとされている。ササユリ(ユリ科ユリ属)は、解熱、鎮咳などの作用があるとされている。
鎮花祭は、毎年4月18日に行われる。
鎮花祭では、特別に、「鎮花御幣」と「忍冬酒」が授与される。鎮花御幣は、疫病除であり、健康長寿を祈念する。忍冬酒は、三輪山のスイカズラと狭井神社のご神水で作られている。
私は、この鎮花祭のことを、くすり博物館(岐阜県各務原市)で知った。その時、桜の花びらが散る頃に病気が流行る、ということが、なぜか妙にこころに残り、いつか大神神社に行きたいと思った。その数年後に奈良に通うようになってからは、奈良が、祈りと癒しの特別な場所に思えた。今では、奈良に行くことが、私にとって、こころとからだの健康に役立っているような気がする。

桜には、いろんな祈りや癒しが秘められている。
たとえば、お花見で、お酒を飲んでどんちゃん騒ぎすることはマナーが悪いと言われるが、あえて、桜の木の下で飲んで騒いで楽しむこと自体に、何らかの意味があるような気がする。飲んで騒いでいたら、桜の花なんて見てないんじゃないか、とも思えるが、実は、それって、昔からやっているお祭り、ハレの日と同じことなんじゃないだろうか。飲んで騒いで楽しんで、自分自身を解放する時間は大切である。

桜の花は、目で見ても綺麗だし、味わうことや香りを楽しむこともできる。薬用にもなり、こころやからだも癒される。そして、華やかに咲いて、潔く美しく舞い散ることが、日本人の精神性を培ってきた。

日本の国花である桜の花が、日本人の祈りと癒しの象徴であることは、偶然ではなく、意味のあることのように感じられる。

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# by tonepedra | 2012-04-17 23:40 | 薬草/植物療法

利休梅の花

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私の実家の庭には、リキュウバイ(利休梅)がある。愛知県の母の実家にあった木を、取り木にして、東京に植えたものである。

利休梅は、おばあちゃんが大好きな花だった。おじいちゃんも、俳句に利休梅を使っていたらしい。今では、愛知県の家はもうないが、東京の家の中心の木(シンボリック・ツリー)になりつつある。

利休梅は、ソメイヨシノが散る今頃に、清々しい白い花を咲かせる。花が桜に似ているのは、同じバラ科の仲間だからである。白い花と緑色の葉が、初夏を思わせる。遠くから見ても、近くで見ても、ソメイヨシノに負けないくらい美しい花である。

「利休梅」という名前は、千利休とは関係ないようであるが、茶花としてよく利用されたことから、その名がつけられたらしい。「利久梅」「梅花下野(バイカシモツケ)」「梅咲き空木(ウメザキウツギ)」などとも呼ばれているらしい。

利休梅の花言葉は、「控えめな美」「気品」。清楚で可憐に咲く利休梅にふさわしい、素敵な花言葉である。


<植物図鑑>

学名:Exochorda racemosa
英名:Common Pearlbush
和名:リキュウバイ(利休梅、利久梅)
原産地:中国
科名・属名:バラ科ヤナギザクラ属
種類:落葉低木
高さ:2〜4メートル
花期:4〜5月(最近は4月のうちに咲き終わることが多い)
花色:白
歴史:日本には明治時代に渡来。

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# by tonepedra | 2012-04-17 17:11 | 植物

正暦寺の精進料理

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先日、奈良交通・定期観光バスの「静寂の尼僧寺院と正暦寺」というコースに参加した。
まずは、興福院という静かな尼寺を拝観し、92歳だとおっしゃる素敵な尼さんにお会いした。
そのあと、正暦寺というお寺で、お参りをさせていただいたあと、住職さんの奥さんが作って下さる精進料理をいただいた。
ふきのとうや宇陀の金ごぼうのてんぷら、ごま豆腐、大和芋のお汁、野菜の炊いたん、水菜のからし合え、つくしや菜の花など、ところどころに季節を感じさせてくれるお料理だった。
料理に入っている野菜や山菜は、なるべくその土地に生えているものや近くの畑で育てているものを使っており、身土不二の精神が生かされている。

正暦寺は、昔はとても大きなお寺だったが、歴史の大きなうねりに巻き込まれた末に、今では小さなお寺となっている。でも、今の住職さんは、お寺の歴史や過去の人々の想いを真摯に受けとめておられて、観光地の有名なお寺よりも、ずっと素晴らしいお寺のような気がした。

正暦寺のご本尊は、薬師如来。こころとからだの健康を守って下さるお薬師さんは、このお寺では、とても可愛らしいお顔の仏さまである。また、孔雀明王も素敵だった。孔雀は毒を持つコブラを食べることから、人間の三毒(貪り、怒り、愚痴)を食べて下さる仏さまとして信仰されている。毒を食べて下さるので、薬師如来と同じだと、住職さんはおっしゃっていた。

お寺にお参りすると、精神的にも肉体的にも健康になった気分になる。それは、
①仏像を拝むことで、こころが洗われて、清々しい気持ちになれること
②お寺までの道のりを自分の足で歩くことで運動になり、適度に疲れて、よく眠れること
③精進料理で、野菜や山菜をたくさん食べて、体の中の毒が出されること(デトックス)
というような理由が考えられる。
でも、やはり、仏さまや神さまや、いろんな人、いろんなことに感謝する気持ちをもつことが、一番の健康法かもしれない。

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# by tonepedra | 2012-03-03 19:21 | 奈良

「日本のハーブ暦」(小寒・大寒)

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昨日は、トトラボ主催「日本のハーブ暦 ~植物と暮らす二十四節気~」に参加した。
昨日のテーマは、「小寒・大寒」で、取り上げられた植物は、モミ。

ちなみに、今年12月7日が大雪であった。そして、12月22日が冬至、来年1月5日が小寒、1月20日が大寒である。

冬至は、一年で一番夜が長い日。この日は、カボチャを食べたり、柚子湯に入ったりして、風邪をひかないように、健康を祈願する。
小寒は、この日から「寒の入り」をあらわし、小寒から節分までの間を、「寒」という。
大寒は 一年で一番寒さが厳しい頃をあらわす。大寒を過ぎると、そのあとはだんだん暖かくなるらしい。

今日のテーマ植物であるモミ(樅)は、マツ科モミ属の常緑針葉樹で、日本には、モミ(Abies firma)やウラジロモミ(Abies homolepis)など5種のモミが自生する。寒い地方の植物と思われがちだが、琉球地方以外、ほぼ日本全国に分布する。
モミの樹脂は香り高く、古くから呼吸器系の植物療法として利用されていた。
モミは、ヨーロッパでは、「不滅の木」として象徴され、冬至祭やクリスマスでシンボルツリーとして飾られる。冬至は、太陽の再生(生まれ変わり)をあらわし、クリスマスはイエス・キリストの誕生をあらわすが、このふたつの日が近いのは偶然ではないような気がする。寒い冬に、温かい太陽の光をまつるのは、古くから大切な信仰だったのだろう。日本でも、お正月には門松としてマツとタケが飾られるが、特別の儀式の日に、香りの高いシンボルツリーがまつられるのは、世界共通のようである。

今日の実習では、モミの温浸油とクリスマスリースを作った。モミの葉と枝を細かく刻み、マカダミアナッツ油に浸し、湯煎する。モミをハサミで刻む作業は、モミの樹脂がついて手がベトベトになってしまうが、部屋中にモミの香りが充満し、参加者みんなが幸せな気分になれた。
モミの精油成分には、リモネンやピネンなどが含まれ、抗菌作用、血行促進作用、創傷治癒作用などがある。モミの温浸油は、冬の乾燥して荒れた肌を優しく包み込んでくれる。

冬は、冬至、お正月、七草、小正月、節分など、植物を使う伝統行事が多い。それは、寒い冬に病気になりやすく、また食べるものが少なく栄養不足になりやすかった時代、健康や長寿を祈る人々の祈りや願いから生まれた智慧だったのだろう。こうした昔ながらの智慧を、これからも大切にしたい。

ところで、写真のクリスマスリースは、我が家では、クリスマスのあとも、門松がわりに飾られているのは間違いない。

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# by tonepedra | 2011-12-10 12:39 | 薬草/植物療法

秋に咲く桜

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桜といえば春、と思い浮かべるが、実は、秋に咲く桜もある。ジュウガツザクラである。

春に咲く桜ほど華やかではないが、つつましく可憐である。遠くから見ると、白い雪か紙吹雪が枝に降ったかのようにも見える。

今年は、震災や原発事故で、ちょうど花見の時期は、美しい桜の花が咲いていても、放射能が気になり、こころから桜の花を愛でるような気持ちにはあまりなれなかった。今になって、ようやく気持ちも落ち着き、桜の花を堪能できるようになってきたのではないだろうか。

震災や原発事故は、まだ大きな傷あとや余波を残しているが、それでも、花は咲くし、鳥は飛ぶし、四季はめぐるし、人は生きている。
どんな状況でも、とりあえず、生きていくことが大切である。

地味で目立たないけど、美しく咲いている十月桜を愛でながら、この場で自然の美しさを堪能できる自分を幸せだと感じられた一日だった。

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# by tonepedra | 2011-11-14 19:06