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あをによし 奈良の都の 薬草曼荼羅

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翠色の川


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去年の晩秋、奈良県五條市を訪れた。
五條にある栄山寺に行くためである。
栄山寺は、国宝八角円堂で有名であるが、交通が不便であることから、観光客もあまり訪れない。

JR五條駅から栄山寺までの道のりの途中に、川が流れていた。
宇智川(紀の川の支流)という一級河川であった。
この川は、ある地点を境に、川の水の色が、大変美しい翠色(エメラルドグリーン)に変わっていた。
もしかしたら、周囲の木々の緑色が川の水面に映し出されて、翠色になったのかもしれない。
それにしても、写真では伝えきれないほど美しい、奇跡の翠色であった。
私は川遊びや釣りはしないが、こんな美しい翠色の川のそばで暮らしていたら、きっと毎日、ただ眺めているだけで楽しく、こころが癒されるだろうと感じた。

それにしても、川の流れを見つめていると、こころが癒されるのはなぜだろうか。
美空ひばりの「川の流れのように」という歌の通り、川の流れが人生にたとえられるからだろうか。

「ゆく川の流れは絶えずして、もとの水にあらず」
鴨長明の「方丈記」の冒頭の言葉にもあるように、同じ水は二度と流れてこない。
人生も川の流れと同じで、時の流れ(過去)を取り戻すことはできないし、自分自身も常に変わり続ける。
人生は「一期一会」といわれるように、同じ出会いはありえない。そして、出会いがあれば、別れはいつか必ずやってくる。

これから先、いつかまた再び、宇智川を訪れるとき、もう同じような翠色の川ではないかもしれない。
でも、私の記憶の中で、この川は、美しい翠色で彩られていることだろう。
記憶の中の翠色は、時の流れとともに、人生を彩る大切な色になるだろう。

tone
by tonepedra | 2010-05-15 22:35 | 奈良